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心不全を支える|高齢者の再入院を防ぎ、自分らしい生活をする実践ガイド

「心不全」とはどのような状態かご存じですか?
「心不全」は病名というより、心臓の機能が低下し、動きにくくなった状態を指す言葉です。

心臓の病気によって心臓から全身へ血液を送り出すことが困難となります。その結果、息切れや足のむくみが見られ、日常生活に制限が出ることもあります。

では、心不全と診断されたら、「できるだけ安静にして動かない方がいい」のでしょうか。実は、そうとは限りません。心不全の治療では適度な運動が非常に重要と考えられています。

医療ライター

西田リョウイチさん

今回は、心不全について解説するとともに、運動の重要性を現役理学療法士が紹介します。

目次

高齢者に多い心不全の特徴

心臓は生まれてから生涯を終えるまで休むことなく動く臓器です。

心臓が疲労感を認め、全身へ血液を送り出すことが困難となる「心不全」は何が原因となるのでしょうか。心不全は単一の病気により発症するものではなく、さまざまな疾患が原因となって生じる病態です。[1]

そのため、加齢により罹患率が高くなります。

医療ライター

西田リョウイチさん

若年者が発症する心不全と比べて、高齢者が発症する心不全は、病態や背景に大きな違いがみられる点が特徴です。[1]

本章では、高齢者に多い心不全の特徴や注意点、退院後の生活で大切な自己管理、そして心不全の進行ステージについて解説していきます。

高齢者に多い心不全とは?

超高齢社会における日本において、今後心不全の発症率は年々増加していくことが予想されます。[2]
高齢者の心不全は、高血圧や糖尿病、腎機能低下など複数の疾患を背景に発症しやすいのが特徴です。[1]

アメリカの研究によると、加齢に伴い心不全の罹患率および死亡率は上昇することが報告されています。[3]

息切れやむくみ、倦怠感といった症状も加齢変化と区別しにくく、発見が遅れることがあります。

医療ライター

西田リョウイチさん

また症状が急に悪化しやすく、再入院を繰り返す傾向があることも特徴の一つです。[4]

自分自身だけでなく、家族や友人などの介護者が日常生活の中で体調変化に気づき、早期に対応することが重要です。[5]

心不全は「退院後」が本当のスタート

心不全は入院治療によって、一時的に症状が改善しても治ったわけではありません。
むしろ退院後の生活こそが重要です。

入院中は毎日医療スタッフが身体状況を管理し、「退院可能」な身体状況になるまで病院で過ごすことになります。

一方で自宅退院後は、薬物療法や食事管理、運動管理など、日常管理を自ら行うことになります

再入院の多くは、以下のような管理の不十分さが原因となるため注意が必要です。[6]

  • 塩分や水分の過剰摂取
  • 体重変化の見逃し
  • 運動不足または過活動
  • 服薬の中断
医療ライター

西田リョウイチさん

退院後は自己管理の質が予後に影響する場合があります。

心不全の再入院率は退院30日以内で23%におよびます。[7]

心不全による再入院を防ぐためにも、退院後の自己管理が大切です。

心不全の進行ステージを理解する

2022年アメリカ心臓病学会の心不全マネジメントガイドラインによると、心不全はステージA~Dの4つのステージに分けられます。[6]

心臓の構造的異常心不全の症状治療目標
ステージAなしなし危険因子のコントロール
ステージBありなし心不全の発症予防
ステージCありあり症状コントロール
ステージDありあり再入院予防終末期ケア
アメリカ心臓病学会の心不全マネジメントガイドラインによる心不全ステージ

とくにステージC以降では生活制限が必要になることもあり、日常生活への影響が大きくなります

医療ライター

西田リョウイチさん

ステージを理解することは、適切な対応や予防行動を考えるうえで重要です。 [6]

なぜリハビリテーションが不可欠なのか

心不全治療といえば、薬物療法や食事制限を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
実際には、それだけでは十分とは言えません。

心不全は心臓だけではなく、肺や筋肉、さらに日常生活まで影響する「全身の病気」です。
特に高齢者では筋力低下が進行し、動作能力の低下に至りやすくなります

医療ライター

西田リョウイチさん

体力低下を防ぎ、再入院を防ぎながら自分らしい生活を維持するために欠かせないのがリハビリテーションです。

本章では、リハビリテーションの必要性について詳しく解説していきます。

心臓、肺と筋肉の密接な関係

心不全を発症すると、息切れや全身倦怠感から、ベッドで横になる時間が長くなります。その結果、呼吸器や消化管など、全身のさまざまな機能に影響をおよぼします。

とくに重要なのが筋肉と肺です。筋肉は血液を送り返すポンプの役割も担っているため、筋力低下は心臓への負担増加にもつながります[8]

医療ライター

西田リョウイチさん

つまり、心不全の管理には「全身」を見る視点が必要です。

リハビリテーションの医学的効果

心不全に対するリハビリテーションは、医学的に一定の効果が示されている治療の一つです。おもに以下のような効果が期待されています。[9]

  • 運動耐容能の向上
  • 再入院率の低下
  • 生活の質の改善
医療ライター

西田リョウイチさん

適切な運動は、むしろ心機能を補助し、長期的な安定につながります

家族指導や自己管理もリハビリテーションの一つ

リハビリテーションは運動だけではありません。生活全体を整えることも重要な要素です。[10]

  • 毎日の体重測定
  • 浮腫や息切れの観察
  • 食事(塩分制限)の工夫
  • 活動量の調整

これらを患者本人だけでなく家族も理解し、支援することが重要です。

医療ライター

西田リョウイチさん

とくに高齢者では、家族の関わりが再入院予防に大きく影響します。

心不全リハビリテーションの運動の進め方

運動は「安全に、継続的に行うこと」が最も重要です。まずは軽い運動から開始します。

座位での体操やゆっくりした歩行など、無理のない範囲ではじめましょう。目安は「ややきつい」と感じる手前の強度です[11]

運動中や運動後には、以下を確認しましょう。

  • 運動中の急激な血圧上昇
  • 心電図異常や不整脈の出現
  • 強い疲労感や息切れ

上記について、異常があれば中止します。[12]

また、以下のサインがある場合は注意が必要です。[13]

  • 数日で2kg以上の体重増加
  • むくみの変化
  • 安静時の息苦しさ
医療ライター

西田リョウイチさん

上記のような状態が見られる場合は心不全が悪化している可能性があるため、早めに医療機関へ相談してください。「頑張りすぎないこと」「続けること」が成功のポイントです。

心不全を理解しよう

心不全は、長期的な治療や生活管理が必要になる可能性がある病気です。

しかし、正しく理解し、適切に管理することで進行を抑えられる場合があります

医療ライター

西田リョウイチさん

その結果、自分らしい生活を続けやすくなるはずです。

日常の積み重ねが、将来の健康状態に影響することがあります。いつまでも自分らしく楽しく過ごすために、心不全を理解しましょう。

【参考】

[1]Ying Lin,Shihui Fu.Yao Yao.et al. Heart failure with preserved ejection fraction based on aging and comorbidities, J Transl Med.2021 Jul 6;19:291

[2]Yuji Okura,Mahmoud M Ramadan,Yukiko Ohno.et al.Impending epidemic: future projection of heart failure in Japan to the year 2055,Circ J. 2008 Mar;72(3):489-91(Abstract)

[3]Garrett T. Senney,Developmental Origins of Cardiovascular Disease: Understanding  High Mortality Rates in the American South,Int. J. Environ. Res. Public Health 2021, 18(24), 13192

[4]Sammer Kurmani.Iain Squire,Acute Heart Failure: Definition, Classification and Epidemiology,Curr Heart Fail Rep. 2017 Aug 7;14(5):385-392

[5]Lisa Kitko, PhD, RN, FAHA, Chair, Colleen K. McIlvennan, DNP, ANP, FAHA,et al. Family Caregiving for Individuals With Heart Failure: A Scientific Statement From the American Heart Association,Circulation Volume 141, Number 22

[6]Paul A. Heidenreich、MD、MS、FACC,et al.2022 AHA/ACC/HFSA Guideline for the Management of Heart Failure: A Report of the American College of Cardiology/American Heart Association Joint Committee on Clinical Practice Guidelines.Circulation.Volume145, Number18

[7]Joseph S Ross,Jersey Chen,Zhen Qiu Lin.et al.Recent National Trends in Readmission Rates after Heart Failure Hospitalization,Circ Heart Fail. 2009 Nov 10;3(1):97-103

[8]R Belardinelli,T J Barstow,P Nguyen,et al.Skeletal muscle oxygenation and oxygen uptake kinetics following constant work rate exercise in chronic congestive heart failure,Am J Cardiol. 1997 Nov 15;80(10):1319-24(Abstract)

[9]Naoto Miyawaki,Akira Takashima.Evidence of Cardiac Rehabilitation for Heart Failure With Reduced Ejection Fraction in Recovery to Maintenance Phase,Circ Rep. 2024 Nov 20;7(1):4-5 

[10]Takumi Kawamura,Kazufumi Kitagaki,Miho Takeuchi.et al.Implications of a Self-Care Management Tool on Cardiovascular Events in Heart Failure Patients Within Six Months in a Regional City Hospital of Japan,Cureus. 2025 Jul 30;17(7):e89080(Abstract)

[11]Ewa Piotrowicz,How to do: telerehabilitation in heart failure patients,Cardiol J . 2012;19(3):243-8(Abstract)

[12]Jenna L Taylor,Jonathan Myers,Amanda R Bonikowske.Practical Guidelines for Exercise Prescription in Patients with Chronic Heart Failure,Heart Fail Rev. 2023 Apr 18;28(6):1285-1296 

[13]Marat Fudim,Kishan S Parikh,Allison Dunning.et al.Relation of Volume Overload to Clinical Outcomes in Acute Heart Failure (From ASCEND-HF),Am J Cardiol. 2018 Nov 1;122(9):1506-1512(Abstract) 

この記事の執筆者

医療ライター:西田リョウイチさん

理学療法士。博士(医学)。急性期病院、回復期病院、研究所を経験。がんや心不全などの内科系疾患を数多く担当してきました。現在は、デイサービスの管理者をしています。「医療知識がなくてもわかりやすい医療記事」をコンセプトに執筆活動をしています。「第23回Medi+医療ライターのはじめかた講座」卒業生。

Note:医療ライター 西田リョウイチのポートフォリオ(2026.3.19更新)|西田リョウイチ

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