「膝の痛みが強くなってきた母に、いつまでも元気に歩いてほしい。でも、身体への負担が大きい手術は怖がって受けてくれない……」そのような悩みを抱えていませんか?
ヒアルロン酸注射の効果が薄れてくると、「我慢するしかない」と諦めたり、手術を不安に感じたりする方も少なくありません。
しかし2026年時点では、膝の治療において、状態や目的に応じて再生医療が選択肢となる場合があります。近年では一定の条件下で保険診療として行われる治療もありますが、最新の適用条件は、医療機関や公的情報で確認が必要です。
本記事では膝の痛みの原因として高齢者に多い変形性膝関節症について、自分の細胞で膝を修復する仕組みから、自由診療と保険診療の違い、医療機関を選ぶときの注意点まで紹介します。
薬剤師ライター羽田 ゆうさん
ご家族との大切な時間を守るために、まずは正しい情報収集からはじめてみませんか。
膝の痛み、次の選択肢は?


ヒアルロン酸注射を続けていても、なかなか痛みが引かないと不安になりますよね。現在の膝治療は、保存療法(痛み止めの薬やリハビリテーション)が中心で、効かなくなってくると手術(人工関節)を含む治療が検討されることもあります。[1]



羽田 ゆうさん
この章では、新しい選択肢として注目されている「再生医療」の基本的な考え方について、一緒に考えていきましょう。
ヒアルロン酸注射が効きづらいと感じたら
ヒアルロン酸注射は、膝の関節内でクッションの役割を果たし、滑りを良くする治療です。[2]
しかし症状が進むと、痛みを抑えきれなくなることがあります。「注射の間隔が短くなってきた」「以前ほど痛みが楽にならない」と感じる場合は、次の治療を考えるサインかもしれません。
「注射」か「人工関節」以外の選択肢
「手術は怖いけれど、この痛みを何とかしたい」という方にとって、再生医療は新しい選択肢になる可能性があります。
人工関節のような大きな手術とは異なり、自分自身の細胞や血液を使って、膝の状態を改善することを目指す治療です。



羽田 ゆうさん
身体への負担を抑えつつ、痛みの軽減や機能回復が期待できる点が特徴です。[3]
膝の再生医療とは?従来の治療との違い
現在行われている薬物治療や運動療法は「痛みを和らげる」ことが目的です。[4]
一方、再生医療は痛みの原因である「膝の環境そのものを改善する」ことを目指します。自分の細胞を使って「組織の修復を促す」という新しい治療法です。[5]



羽田 ゆうさん
次の章からは、再生医療について自由診療と保険診療に分けて特徴を紹介します。
自由診療による再生医療の特徴


自由診療の再生医療には、おもに自分の血液を用いた方法があります。
入院の必要がなく、外来で受けられるのが大きなメリットですが、全額自己負担となるため費用面での検討も大切です。
また、すべての症状に効果があるわけではなく、適応の見極めが非常に重要となります。



羽田 ゆうさん
医療機関を選ぶときの注意点についても確認していきましょう。
自分の血液を活用した治療
自由診療で最も多く行われているのが、自分の血液を利用するPRP(多血小板血漿)療法です。[6]
血小板は傷を治す過程で重要な役割をしています。濃縮した血小板を患部に注射することで、組織の修復をサポートします。大がかりな手術をせずに、治療当日に帰宅できる点はメリットです。
費用は施設により異なりますが、全額自己負担になります。



羽田 ゆうさん
治療のほかに検査や診断なども含めた総額をよく確認する必要があります。[7]
副作用と効果が期待できないケース
再生医療は誰にでも効果があるわけではないです。自分の細胞を用いるためアレルギーや副作用は少ないとされていますが、注射部位の一時的な腫れや痛みが生じることはあります。
PRPは軽度〜中等度の患者に対する効果が報告されていますが、個人の状態により差があります。



羽田 ゆうさん
軟骨が完全に消失しているなど、症状が進行している場合には、十分な効果が得られないこともあります。[7]
自分の膝の状態で効果が見込めるかどうか主治医とよく相談のうえでご判断ください。
再生医療の施設の選び方
再生医療を行う施設は国への届け出が義務付けられており、厚生労働省のホームページに「再生医療等提供機関一覧」が公開されています。[8]
通えそうな医療機関を見つけたら、「再生医療等提供計画番号(計画番号)」がサイト内に記載されているか探しましょう。そして提供機関一覧に施設名が掲載されているか確認します。



羽田 ゆうさん
またメリットだけでなく、効果が期待できないケースや治療のリスク、費用、いざというときの対応なども注意してみていきましょう。
保険診療による再生医療の特徴


再生医療の中には、一定の条件を満たすことで健康保険が適用される治療も存在します。
保険診療の場合、高額療養費制度を利用できるため、自己負担額を抑えられる点は大きなメリットです。



羽田 ゆうさん
一方で、手術やその後のリハビリのために入院が必要となるケースもあり、仕事や家庭生活など日常生活への影響を考慮する必要があります。
こうした特徴を踏まえ、治療内容を具体的に確認していきましょう。
自分の軟骨を育てて移植する治療
保険診療として認められている再生医療の一つである「自家培養軟骨移植術」を紹介します。
患者さん自身の正常な部分の軟骨の一部を採取し、数週間かけて増やした後、欠損部分に移植する方法です。



羽田 ゆうさん
一定以上の大きさの軟骨欠損などに適応されますが、関節の変形が進みすぎてしまっていると、移植した軟骨がうまく育たないため適応とならない場合があります。[9]
入院・リハビリなど生活への影響
保険診療の再生医療は、多くの場合、外科的な手術を伴います。そのため、数週間の入院や、その後も移植した軟骨を定着させるための長期的なリハビリが必要になります。



羽田 ゆうさん
自由診療の注射による治療と比べると、仕事や家事、介護などの日常生活への影響が大きくなるため、事前に家族ともスケジュールを調整しておくことが大切です。
適応や制度は個別確認が前提
再生医療が保険で受けられるかどうかは、症状の程度によって厳密に決まっています。
保険適用の取り扱いは制度改定等により変わることがあるため、最新の適用条件は、医療機関や公的情報で確認が必要です。



羽田 ゆうさん
費用については高額療養費制度を適用することで、所得に応じた月額上限に抑えられますので、確認しておきましょう。[10]
自分に合った膝の治療を選ぼう


膝の痛みに対する治療は、日々進歩しています。
今回は変形性膝関節症について、ヒアルロン酸注射や手術以外の治療法として再生医療についてご紹介しました。
再生医療は新しい選択肢ですが、誰にとってもベストな治療法とはかぎりません。



羽田 ゆうさん
まずは「自分の膝の状態だと再生医療は検討できますか?」と現在の主治医に相談してみてはいかがでしょうか。
生活スタイルや理想とする未来に最も近い方法をふまえて判断しましょう。
[1]国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター > 病院 > 健康長寿ナビ > 膝関節の痛みと治療について
[2]独立行政法人医薬品医療機器総合機構 > 医薬品情報検索 > 医療用医薬品情報検索 > アルツディスポ関節注25mg > 添付文書 2022年 10月改訂 ( 第1版 )
[3]東京科学大学 > Science Tokyoニュース > 東京科学大学発の半月板再生医療技術が実用化へ
[5]経済産業省>政策について>政策一覧>ものづくり/情報/流通・サービス>バイオ>研究開発>再生・細胞医療・遺伝子治療
[6]厚生労働省>政策について>審議会・研究会等>厚生科学審議会(再生医療等評価部会)>第43回厚生科学審議会再生医療等評価部会>【資料1-2】P.24
[7]東京科学大学>大学院医歯学総合研究科>整形外科学分野>最新のトピックス>PRP(APS)股関節内注射
[8]厚生労働省>政策について>分野別の政策一覧>健康・医療>医療>再生医療について >再生医療等提供機関の情報について


薬剤師ライター:羽田 ゆうさん
薬学大学院卒。これまで製薬会社の営業・学術部門でオンコロジー、希少疾患領域などの情報提供・収集活動を経験。現在は安全管理部門で副作用情報の管理業務に従事。専門性の高い領域においても、論文や厚生労働省の通知などのエビデンスを元に、分かりやすく正確な情報発信を心がけています。「第23回Medi+医療ライターのはじめかた講座」卒業生。
羽田さんも受講した、「医療ライターのはじめかた講座」とは?









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