「話す」「聞く」「食べる」という、コミュニケーションと生活の質(QOL)を支える専門職、言語聴覚士(ST:Speech-Language-Hearing Therapist)。高齢化の進展や発達支援へのニーズの高まりを受け、重要性は年々増しています。
一方で、「資格取得までの流れは?」「養成校では何を学ぶの?」と疑問を持つ方も多いでしょう。
さらに、2024年度に「言語聴覚士学校養成所指定規則」の内容が見直され[1]、合わせて「言語聴覚士養成所教育ガイドライン」も改正されました。[2]
本記事では、言語聴覚士になるまでの流れや養成校で学ぶ内容、2024年度からのカリキュラム改正のおもな変更点を解説します。
医療ライターしまだはなさん
言語聴覚士である筆者が、資格取得への影響や、これからのSTに求められる力についても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
言語聴覚士になるには?資格取得までの流れ


言語聴覚士は医療系の国家資格です。独学や民間の通信講座だけでは資格を取得できず、国が指定した養成校で学び、受験資格を得たうえで、国家試験に合格する必要があります。
受験資格を取得するルートは、おもに2つです。
養成校で学び、国家試験の受験資格を得る
資格取得の最短ルートは、高校卒業後に国が指定した養成校へ進学し、受験資格を得るコースです。養成校は4年制大学、3年制もしくは4年制専門学校があります。
必要な単位を取得し、卒業または卒業見込みとなることで、国家試験の受験資格を取得。国家試験は例年2月下旬に実施されます。
社会人・大卒者は2年課程も選択肢になる
すでに一般の4年制大学を卒業している(あるいは指定の科目を履修して卒業した)場合、2年制の養成課程(大学や専門学校)を選択することが可能です。
大卒資格を活かして、比較的短期間で資格取得を目指せます。大学卒業後すぐに進学したい方や、社会人経験を経て目指す方にとって、2年間で集中的に学べることは大きな魅力といえるでしょう。
学校によっては厚生労働省の「専門実践教育訓練給付金*」の対象に指定されています。



しまだはなさん
社会人経験のある方は、条件を満たせば学費の一部が支給されるため、経済的な負担を軽減できるでしょう。
数は限られますが、働きながら通える夜間部(昼夜間部)を設置している学校も存在します。
筆者も社会人経験を経て、大卒2年制課程を卒業しました。同じ目標をもつ仲間と出会えた2年間は想像以上に充実した日々でした。



しまだはなさん
少し遠回りになりましたが、その経験が活きる仕事だと感じています。
国内には唯一、1年制の専攻科(言語聴覚学課程)が存在します。すでに大学等で関連科目を学び、理学療法士や看護師などの資格を持つ人が、最短プラス1年で言語聴覚士とのダブルライセンス取得を目指すルートです。
言語聴覚士の養成校では何を学ぶのか?


言語聴覚士の養成校では、支援に必要な知識を広く学び、実技演習や学外での臨床実習を通して、卒後を見据えた実践力を身につけます。
基礎分野・専門基礎分野・専門分野で支援に必要な知識を学ぶ
高卒者対象の養成校のカリキュラムは「基礎分野」「専門基礎分野」「専門分野(実習を含む)」の3つで構成されております。[2]おもな科目は以下のとおりです。
| 分野 | おもな科目 |
| 基礎分野 | 一般教養科目にあたる分野で、物事を根拠に基づいて考え、自分で判断・行動する力を養う分野。[2]、自然科学、外国語など。 |
| 専門基礎分野 | 言語聴覚障害学の基礎となる科目。[2]解剖生理学、心理学、言語学など。 |
| 専門分野 | 言語聴覚士の専門領域。[2]失語症、言語発達障害、聴覚障害、音声障害、構音障害、摂食嚥下障害など。 |
専門分野を学ぶには、医学の知識(専門基礎分野)や、一般教養(基礎分野)など、土台となる知識が必要です。そのため、さまざまな科目を体系的に学ぶ必要があります。
また、2年制課程では、基礎分野の単位を大学で取得したとみなされるため、その分野の学習が省略されます。



しまだはなさん
これにより、2年間という短い期間で、受験資格の取得を目指せるのです。
臨床実習で現場での関わり方を学ぶ
言語聴覚士のカリキュラムには、病院や介護・福祉施設などで、現役の言語聴覚士による指導のもと、現場を経験する「臨床実習」があります。
実習で身につけるのは、評価や訓練、指導といった具体的な技能です。



しまだはなさん
また、他職種と連携する方法を学び、言語聴覚士としての基礎的な実践能力を学びます。
カリキュラム改正で何が変わったか


言語聴覚士養成所指導ガイドラインの改正により、新しい教育内容は3年制・4年制の課程は 2025年度入学生から、2年制課程では 2026年度入学生から順次適用となりました。ここでは、おもな変更点を解説します。
単位数・授業時間の増加
4年制・3年制・2年制いずれも「8単位・245時間」増加され、具体的な変化を一覧表にまとめました。[4]
| 課程 | 旧カリキュラム | 新カリキュラム | 差分 |
| 高卒4年(3年)課程 | 93単位 | 101単位 | 8単位・245時間 |
| 大卒2年課程 | 73単位 | 81単位 | 8単位・245時間 |
増加した8単位の内訳は以下の通りです。
- 専門基礎分野(+3単位)
医用画像の評価や救急救命の基礎的知識などの内容が追加[4] - 専門分野(+5単位)
「地域言語聴覚療法学(2単位)」が新設[4]
「臨床実習」が従来の12単位(480時間)から15単位(600時間)へ拡大(+3単位)[4]



しまだはなさん
(※このほか、既存科目からの分離・再編によって「言語聴覚療法管理学(2単位)」も新設されています)
臨床実習の時間数とルール変更
今回の改定では、実習時間が増えただけでなく、実習の進め方や指導体制も見直されています。
おもな変更点は、以下の4つです。
1. 実習先の幅が広がる
病院だけでなく、訪問リハビリや介護保険施設、障害者(児)支援施設など、地域での支援を学ぶ機会が広がります
2.段階的に学べる実習方法になる
見学実習・評価実習・総合臨床実習の順に学び、各段階に教育目標を設定することで、現場で必要な力を段階的に身につけます。
3.実習前後の評価と振り返りが行われる
実習の前後に能力評価や振り返りを行い、養成校と実習施設が連携して学びを支えます。
4.実習指導者の要件が見直される
実習指導者は、実務経験5年以上に加え、臨床実習指導者講習会*の受講が求められるようになりました。学生が安心して学べる指導体制の整備につながります。
改正で資格取得は難しくなった?
科目数や実習時間が増えるため、日々の勉強の難しさが増す可能性はあるでしょう。とくに2年制課程は、スケジュールがより過密化すると考えます。



しまだはなさん
一方で、段階的な実習の導入や指導体制の見直しにより、学びの質を担保し、卒業後の実践力を高めるための意義ある変化と言えるでしょう。
これからのSTに求められる力


超高齢社会の進展により、患者さんの症状や生活背景は複雑化しています。地域包括ケアシステム*や発達支援へのニーズが高まるなか、言語聴覚士の役割は多様化しています。



しまだはなさん
これからの時代、とくに以下の2つの力が重要となるのではないでしょうか。
- 地域で支援する力
対象者を「生活者」として捉え、福祉や教育などそれぞれの生活の現場に即した包括的なアプローチを実践する力 - 専門性を地域につなぐ力
医療・介護・教育などの多様な職種と共通言語で協働し、問題解決をする力。
地域包括ケアシステム*:高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制
出典:厚生労働省|地域包括ケアシステム[5]
これからの進路選びの参考に





しまだはなさん
新カリキュラムへの改定は、時代の変化に対応した「これからの言語聴覚士」を育成するための一歩と言えます。
進路選択や養成校選びを進めるにあたり、本記事でご紹介した新カリキュラムの視点を参考にしていただければ幸いです。


医療ライター:しまだ はなさん
言語聴覚士歴19年。病院・在宅・教育機関と幅広く経験し、現在は”子育てを楽しみながら働く”を目指し医療ライターに挑戦中。「一般の方の悩みや不安に、専門職の視点と分かりやすい言葉で並走する」がモットー。情報の少ない言語聴覚士の分野を中心に役立つコンテンツを提供。 「第23回Medi+医療ライターのはじめかた講座」卒業生。
しまださんも受講した、「医療ライターのはじめかた講座」とは?









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