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家族が限界になる前に|認知症の介護に困ったときの3つの対処法

「認知症の父が急に怒鳴ったり、外へ出ていこうとしたりする。どう対応したらいいの?」
「振り回されてもう限界。家族だけで支えるのはもう無理かも……」

認知症のある家族に、徘徊や妄想、暴言がみられるようになると、毎日の介護や対応に心も体もすり減ってしまいがちです。徘徊や妄想、暴言などは不安や混乱、環境の変化が重なることで強まる場合があります。

医療ライター

emiさん

頭ごなしに否定せず、ご本人が安心できる環境を整えることが大切です。

本記事では、多くの認知症の方に関わってきた認知症ケア専門士で理学療法士の筆者が、行動の意味や受け止め方について、わかりやすく解説します。あわせて、徘徊や妄想、暴言といった認知症の症状への対処法や、公的な支援制度も解説します。

目次

徘徊・妄想・暴言が起きる背景

徘徊や妄想、暴言は、ご本人の性格だけで起こるものではなく、さまざまな要因が重なって表れる行動です。記憶や時間があいまいになったり、不安や不調を抱えていたりするなど、ご本人なりの理由や困りごとが隠れている場合もあります。環境の変化に慣れにくいケースもあるでしょう。

ここでは、徘徊や妄想、暴言についての背景を4つにわけて解説します。

記憶や時間・場所があいまいになる

認知症では、記憶や判断に関わる機能が低下し、日時や今いる場所がわかりにくくなることがあります。[1]また、少し前の出来ごとを覚えておくことが難しくなり、今の状況を自分でうまく説明できないケースも少なくありません。

医療ライター

emiさん

こうした変化が、探し物をして歩き回ったり「誰かに盗られた」と思い込んだりする言動として表れる場合があります。

不安や混乱などの心理的な負担がある

認知症の人の場合、判断や理解が難しくなり、不安や混乱を抱えやすい方も多いです。

たとえば、今いる場所や時間がわからず不安になったり、目的地を見つけようと徘徊したりします。また、知っている人や物がわからず混乱し、記憶を埋めようと妄想する場合もあります。

医療ライター

emiさん

周囲の状況をよく理解できないことへの不安から、攻撃的になり、暴言がみられるケースも少なくありません。[2] 

暴言や妄想の背景には、伝えたいことをうまく言えないもどかしさや、苦しさ、恐怖などがある可能性を知っておきましょう。

痛みや体の不調による不快感がある

認知症の人は、痛みや熱などの体調不良が落ち着かなさや怒りっぽさにつながることがあります。[3]

結果として、いても立ってもいられず歩き回る、疑い深くなる、きつい言い方になるなどの形で表れることがあります。

環境の変化や刺激に対応しにくい

場所や周囲の人などの環境の変化は、認知症の人の日常生活のリズムを崩し、不安や混乱につながりかねません。認知症の人は、音や空間、匂いなど周りの環境に影響されやすい特徴があります。

そのため、できるだけ刺激や変化の少ない暮らしを意識してみましょう。

徘徊・妄想・暴言に対する3つの対処法

認知症の症状である徘徊・妄想・暴言は、介護する家族にとって心身ともに負担となり、接し方に悩む場合があります。症状にはそれぞれ理由があるため、原因を理解したうえで対処していくことが重要です。[4]

ここでは、家族の負担を少しでも減らし、お互いが穏やかに過ごすための3つの具体的な対処方法を解説します。

失敗や間違いを責めない

認知症が進み記憶や判断力が低下しても、そのときに抱いた不快な感情が残る場合があります。失敗した事実自体は忘れてしまっても「責められた」ときの嫌な感情がその後もしばらく残る方もいるかもしれません。

トイレの場所がわからず失禁し「連れて行かないから」と怒鳴られた場合は、まずは「つらかったですね」と気持ちに寄り添ってみましょう。そして「大丈夫ですよ」と声をかけながら、着替えのお手伝いをします。

医療ライター

emiさん

失敗や間違いを見つけた際は、事実を問い詰めず、プライドを傷つけない配慮が必要です。[5]

できたことを褒め、スキンシップを大切にする

小さなことでも、できたことに注目して笑顔で褒め、スキンシップを大切にしましょう。認知症が進行すると「できないこと」が増え、ご本人は自信を失い、不安や怒りを感じやすくなります。

筆者は以前「みんなで私の悪口ばかり言う」と訴える認知症の方を担当した経験があります。そこで、手を握りながら「ほかの方とも『〇〇さんは、いつもきれいな身だしなみだね』と話していたんですよ」と伝えました。その瞬間、その方は「そんなことない」と笑顔を見せ、おしゃれをする楽しさについて話してくれました。

医療ライター

emiさん

話を聴くときに手を握る、歩行の際にそっと背中に手を添えるといったスキンシップは、孤立感や恐怖心を和らげてくれるでしょう。[5]

ゆっくりとしたわかりやすい声掛けで見守る

認知症が進行すると「相手の言葉を素早く理解すること」や「周囲の状況を正しく把握すること」が難しくなります。そのため、低めで落ち着いたトーンで、短く語りかけてみましょう。

徘徊で外に出ようとしたときは「どこへ行くの」と問い詰めず「私も行っていい?」と誘ってみます。

医療ライター

emiさん

正面から目をあわせて、無理に止めず見守ることがご本人の安心感につながります。[5]

認知症介護で悩まないための機関や制度

認知症は、ご本人だけでなく家族にも大きな不安や負担をもたらします。お住まいの地域の相談窓口や公的支援に早めにつなげると、介護や生活の見通しを立てやすくなるでしょう。

支援には、行政などの公的機関や専門職によるフォーマルケアと、家族や地域でできるインフォーマルケアがあります。[6]

ここでは「認知症かもしれない」と思ったときに介護や接し方で悩まないための身近な相談窓口と制度を紹介します。

地域包括支援センター

高齢者とその家族のための身近な総合相談窓口です。市町村が設置する機関で、住み慣れた地域で安心して暮らせるよう支える役割があります。

たとえば、下記のような相談が可能です。

  • 介護の悩みや不安
  • 健康や認知症のこと
  • もの忘れが増えて困っていること
  • 金銭管理や詐欺の不安
医療ライター

emiさん

ご本人がまだ受診や介護を嫌がっていても、家族だけで状況を話したり相談できる窓口です。

認知症外来(もの忘れ外来)

もの忘れが年齢による変化なのか、認知症なのか、ほかの病気が関係しているのかを調べる専門外来です。認知症の早期発見と、今後の対応を考えるために受診します。

医療ライター

emiさん

ご本人は症状や変化に気づきにくいことがあるため、受診のときに家族が日常の様子を伝えると診断の助けになります。

具体的には、いつからどのような変化があるかをメモしておきましょう。また、お薬手帳やかかりつけ医の紹介状を用意しておくと、よりスムーズに診療を進められます。

介護保険制度

高齢者などの介護を社会全体で支える公的な制度です。ご本人が認定を受けると、訪問介護やデイサービス、福祉用具の利用など自己負担を抑えて利用できます。サービスの利用料は所得に応じて1~3割を負担し、残りの費用は介護保険から支払われます。[7]

40歳から64歳の人は、特定の病気が原因で介護が必要になった場合に利用が可能です。65歳以上は、介護や支援が必要と認定されれば利用できます。

申請先は、市区町村の窓口や地域包括支援センターです。要介護認定を受けたあとに支援計画を作り、内容に沿ってサービスを利用します。

医療ライター

emiさん

介護保険のサービスを取り入れると、ご家族が自分の時間を持ちやすくなります。仕事や日々の予定との両立もしやすくなるでしょう。

ご本人のペースや気持ちを尊重しよう

認知症のご本人のペースや気持ちを尊重しようと思っても、現実の介護では限界を感じる瞬間もあるかもしれません。それでも「気持ちを尊重しよう」とする思いが、ご本人の安心につながります。[8]

周囲の力も借りながら、ご本人と家族の「ちょうどいいペース」を一緒にみつけていきましょう。

この記事の執筆者

医療ライター:emiさん

大学卒業後、二次救急の総合病院で整形外科疾患、脳血管疾患、内部疾患、がんなど様々な疾患の対応を経験。現在は介護老人保健施設で10年以上勤務し、介護や在宅におけるリハビリ業務に従事しながら2人の子どもを育てている。15年以上の臨床経験で培った専門知識と認知ケア専門士の資格を活かし、「特に高齢者に携わる分野で根拠のある情報をわかりやすくお届けする」を念頭に活動中です。「第25回Medi+医療ライターのはじめかた講座」卒業生。

emiさんも受講した「医療ライターのはじめかた」講座はこちら

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