薬局で薬を受け取るとき、「ほかに薬を飲んでいますか?」「以前この薬を飲んだことはありますか?」など、薬剤師からいろいろな質問をされることがあります。
なかには、「診察のときに医師に症状や薬について詳しく話したのに、薬剤師にもまた同じことを話さなければいけないの?」と感じた経験がある人もいるでしょう。
また、「処方箋に薬品名や量が書いてあるのだから、そこまで聞かなくてもいいのでは?」と、不満や疑問を抱いたこともあるかもしれません。
では、薬剤師はなぜすでに医師に伝えた内容についても改めて質問するのでしょうか?
薬剤師ライター秋田 ユキさん
実は、薬剤師が質問するのには、患者さんが安全に薬を使用するための大切な理由があります。
この記事では、薬剤師が患者さんに質問する理由や、よく聞かれる質問の意味、薬剤師に伝えておきたい情報について解説します。
薬剤師が患者さんに質問する理由


薬局で薬を受け取る際、薬剤師から症状や服用中の薬について質問されることがあります。「医師に伝えたのに、なぜまた聞かれるの?」と疑問に感じる方もいるかもしれません。
薬剤師の質問には、処方された薬を安全かつ適切に使用してもらうための大切な目的があります。
ここでは、薬剤師が患者さんに質問するおもな理由を解説します。
処方箋だけではわからないことを確認している
処方箋には医師が処方した薬の名前や用量などが記載されています。一方で、どのような疾患に対して処方された薬かなど、処方箋だけではわからない情報もあります。[1]
また、薬の種類や量、これまでの薬の使用状況、組み合わせなどについて疑問が生じることもあるでしょう。
その場合、薬剤師が「どのような目的で処方されたのか」「量が適切であるか」などを処方した医師に確認しなければなりません。
これを「疑義照会」といいます。



秋田 ユキさん
疑義照会については、薬剤師法第24条に次のように定められています。
「薬剤師は、処方せん中に疑わしい点があるときは、その処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師に問い合わせて、その疑わしい点を確かめた後でなければ、これによつて調剤してはならない」[2]
引用:厚生労働省 「薬剤師法」第24条
つまり、薬剤師が患者さんにさまざまな質問をするのは、単に処方箋に書かれた薬を出すためだけではありません。
処方箋だけではわからない患者さんの症状などの情報をもとに、安全かつ適切に使用できるかを確認するためでもあるのです。
薬を安全に使えるかチェックしている
薬剤師が質問するもう一つの大切な理由は、薬の重複や飲み合わせ、副作用などの問題がないかを確認するためです。
たとえば、複数の医療機関を受診している場合、それぞれの医師から同じような作用を持つ薬が処方されることがあります。



秋田 ユキさん
薬剤師は服用中の薬をすべて確認することで、薬が重複していないかをチェックします。
また、薬を飲みはじめてから体調に変化があった場合、薬の副作用による可能性について確認が必要です。
「以前と同じ薬だから大丈夫」と思っていても、そのときの体調や併用している薬などによって注意が必要になる場合があります。
このように薬剤師は、患者さんからさまざまな情報を聞き取り、薬を安全かつ適切に使用できるよう確認しています。[3]
薬剤師からよく聞かれる質問の意味


薬剤師から「ほかに薬を飲んでいますか?」と聞かれたら、処方薬だけでなく、市販薬やサプリメントなども含めて伝えることが大切です。
市販薬のなかには、処方薬と同じ成分が含まれていたり、同じような作用を持つものがあったりします。
たとえば、病院から痛み止めを処方されている人が、頭痛があるからと市販の痛み止めを追加で服用すると、同じような成分を重ねて服用する可能性があります。[3]
また、サプリメントや健康食品が薬の作用に影響する場合もあるため注意が必要です。
たとえば、血液を固まりにくくする薬であるワルファリンを服用している場合、ビタミンKを多く含む納豆やクロレラ、青汁などを摂取すると、ワルファリンの作用が弱まることがあります。[4]
このように、普段何気なく摂取している食品や健康食品が薬の作用に影響する場合もあります。



秋田 ユキさん
そのため、薬剤師から質問されたときは、現在使用しているものをできるだけ伝えるようにしましょう。
薬剤師に伝えるべき情報と相談してほしいこと


薬剤師から質問されたとき、何を伝えればよいのかわからず困った経験はありませんか。
薬を安全に使用するためには、現在使っている薬や体調の変化などを薬剤師に伝えることが大切です。
お薬手帳を活用したり、わからないことを相談したりすることで、薬剤師との情報共有がスムーズになります。
お薬手帳を活用して薬の情報を伝える
薬剤師に薬の情報を伝えるときは、お薬手帳を活用しましょう。
お薬手帳には、医療機関や薬局でもらった薬の情報を記録できます。複数の医療機関を受診している場合も、同じお薬手帳を見せることで、薬剤師が現在使用している薬をまとめて確認できます。[5]



秋田 ユキさん
お薬手帳には、紙のお薬手帳のほかに、スマートフォンなどで利用できる電子お薬手帳もあります。
電子お薬手帳なら、スマートフォンで薬の情報を確認できるため、紙のお薬手帳を持ち歩くのが難しい場合にも便利です。
ただし、電子お薬手帳の種類によっては、薬局での情報共有や連携に対応していない場合もあるため、利用する際は確認しておきましょう。[6]
受診する医療機関が変わった場合や、旅行などで普段とは違う薬局を利用する場合にも、お薬手帳があると薬の情報が伝わりやすく便利です。
お薬手帳を持っている場合は、薬局に行く際に忘れずに持参することをおすすめします。
わからないことや気になることは遠慮なく聞こう
薬剤師から質問されたとき、「何を答えればよいのかわからない」「薬のことは難しくて説明できない」と感じることもあるでしょう。
すべてを正確に答えられなくても、わかる範囲で伝えてみてください。
薬の名前がわからない場合でも、お薬手帳を見せたり、薬の袋を持参したりすることで確認できる場合があります。
また、「この薬は何のために飲むの?」「いつまで飲めばいい?」「飲み忘れたらどうすればいい?」など、薬について疑問に思うことがあれば、薬剤師に相談しましょう。
薬を飲みはじめてから「眠くなった」「胃が痛くなった」「以前とは違う症状が出てきた」など、気になる体調の変化がある場合も伝えることが大切です。



秋田 ユキさん
薬剤師からの質問に答えたり、気になることを相談したりすることで、薬を安全に使用するための情報共有ができます。
薬剤師の質問には意味がある


薬剤師が「ほかに薬を飲んでいますか?」「薬は残っていませんか?」「体調に変化はありませんか?」など質問することがあります。
これは薬の重複や飲み合わせ、副作用などを確認し、安全に薬を使用できるようにするためです。
「同じことを何度も聞かれて面倒」と感じることがあっても、処方箋だけではわからない情報もあります。



秋田 ユキさん
薬局ではお薬手帳を活用し、現在使っている薬や市販薬、サプリメント、気になる症状などをわかる範囲で伝えましょう。
薬についてわからないことや不安なことがあれば、薬剤師と情報を共有して、安心して薬を使用しましょう。
【引用】
[2]厚生労働省>法令等データベースサービス>「薬剤師法」第24条
【参考】
[1]厚生労働省>法令等データベースサービス>医師法施行規則第21条
[3厚生労働省>政策について>分野別の政策一覧>健康・医療>医療>医療情報のデジタル化と利活用>電子処方せん(国民向け)
[4]独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)>安全対策業務>患者・一般の方からのくすり・医療機器の相談窓口>くすり相談窓口>くすりQ&A>食品とくすり>Q3 ワルファリンを飲んでいますが、納豆、クロレラ、青汁などの摂取を避けるように指導されました。なぜ、食べてはいけないのですか?
[5]独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)>安全対策業務>患者・一般の方からのくすり・医療機器の相談窓口>くすり相談窓口>知っておきたい薬の知識>薬は正しく使いましょう >お薬手帳を活用しましょう.p7
[6]厚生労働省>政策について >分野別の政策一覧 >健康・医療 >医薬品・医療機器 >電子版お薬手帳


薬剤師ライター:秋田 ユキさん
薬剤師。大学卒業後は製薬企業に9年間勤務し、ジェネリック医薬品を担当していました。現在は地域密着型の調剤薬局で短時間勤務中です。子育てや介護など、プライベートでの経験も活かしながら、医療や健康について、分かりやすく身近な情報を届けていきたいです。 「第25回Medi+医療ライターのはじめかた講座」卒業生。
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