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呼吸困難時の初期アセスメント|看護師が押さえたい観察項目と判断

呼吸困難を訴える患者を前にすると、「どう対応すれば良いのだろう」と迷ってしまう新人看護師は少なくありません。臨床経験が浅い時期ほど判断に自信が持てず、頭が真っ白になってしまい、とりあえず先輩を呼ぶ場面が増えがちです。

しかし、呼吸困難時は、先輩への報告や医師の指示を仰ぐ前に、新人看護師がその場でできることがあります

本記事では、呼吸器内科で新人指導経験をもつ看護師の筆者が、呼吸困難時の観察項目や判断、初期対応を具体的に解説します。

看護師ライター

げんさん

初期アセスメントの流れを理解し、現場で落ち着いて行動できるようになりましょう。

目次

呼吸困難時の緊急性の判断

 

呼吸困難を訴えた直後は、詳細な測定に入る前に全身状態を素早く把握することが大切です。まず、患者に声をかけ、意識レベルの低下がないかを観察します。[1]

呼びかけへの反応が乏しく、意識レベルの低下が疑われる場合は、緊急性が高い状態と考えられます。その場を離れず、速やかに先輩や医師へ報告しましょう。

看護師ライター

げんさん

意識があっても、言葉を発せられなかったり、単語しか出てこなかったりする場合は、呼吸状態の悪化を示す可能性があります。

意識レベルの観察は正確に行いましょう。

初期アセスメント時の観察項目

呼吸困難の初期アセスメントでは、数値だけでなく、呼吸の「質」の評価が重要です。

呼吸様式や努力呼吸の有無とあわせて、呼吸の数、深さ、リズム、音を観察します。SpO₂*やチアノーゼ*の有無も欠かせません。これらの観察項目の総合的な評価が重症度や緊急性の判断につながります。

以下では、呼吸困難時の観察項目について詳しく解説します。

*SpO₂:血中酸素飽和度のことで、血液中のヘモグロビンのうち酸素と結合している割合を%で示した値[2]

*チアノーゼ:血液中の酸素が不足して、皮膚や粘膜が青紫色になる状態[3]

呼吸様式と努力呼吸の有無

健常な人は安静時、おもに横隔膜を使った腹式呼吸をしています。胸や肩・首まわりの筋肉を使っている場合は努力呼吸をしている可能性があり、注意が必要です。[4]

努力呼吸は、種類や特徴を把握したうえで観察しましょう。

努力呼吸の種類特徴患者の様子
鼻翼呼吸気道を広げるため、息を吸うときに小鼻が広がる[5]呼吸が苦しいとき、鼻の穴を大きく動かして少しでも楽に息を吸おうとする様子がみられる。
口すぼめ呼吸呼吸のときに口をすぼめている[5]息苦しいとき、口をすぼめ「ふーっ」とゆっくり息を吐くような呼吸をして、息苦しさを和らげようとする場合がある。
陥没呼吸息を吸うときに胸や首のあたりがへこむ[5]呼吸に大きな負担がかかっているとき、息を吸う力が強くなり、胸や首の皮膚が内側に引き込まれる状態が観察される。
努力呼吸の種類

呼吸の数や深さ、リズム、音の評価

呼吸の数、深さ、リズムは生理的な呼吸機能を評価する基本項目です。正常な状態を正しく理解し、異常の早期発見につなげましょう。

観察項目観察ポイント正常と異常の評価
呼吸数1分間の呼吸回数成人の目安は14〜20回/分[4]
呼吸の深さ浅い・普通・深い通常時と比べて、胸やお腹の上下の動きに変化がないかを確認する
呼吸のリズム規則的・不規則通常は規則的な呼吸のリズムに乱れがある場合、状態変化の可能性がある[4]
呼吸の観察項目

異常呼吸音は呼吸困難の原因を推測する手がかりとなります。異常呼吸音の種類と特徴を整理し、どのような病態が考えられるのかを関連づけて理解しましょう

呼吸音の種類実際の聞こえ方おもな原因・状態の例
水泡音[6]ゴロゴロ、ブクブクとした音痰などの分泌物の貯留、うっ血性心不全[7]
捻髪音[6]髪の毛をこすり合わせるような細かい音特発性肺線維症、肺炎[7]
笛音[6]ヒューヒュー、ピーピーという高い音気道狭窄、喘息、COPD[7]
いびき音[6]グーグー、ゴーゴーという低い音気道内の分泌物貯留、気管支炎、肺炎[7]
異常呼吸音の種類

SpO₂とチアノーゼの有無

SpO₂は一般的に96〜98%程度が目安とされています。[8]90%未満の場合や、普段の値より低下している場合は、酸素化の低下や呼吸不全の可能性があります[9]数値とあわせて、呼吸状態や患者の訴えも確認しましょう。[2]

口唇、爪、顔色が青紫色になっている場合、チアノーゼの可能性があります。[3]

看護師ライター

げんさん

進行すると、意識レベルが低下する場合もあるため、早期発見と対応が必要です。[9]

その場でできる看護師の初期対応

呼吸困難時は、アセスメントと並行して苦痛を和らげるための初期対応を行うことが大切です。医師の指示や検査結果を待つ間にも、看護師がその場でできる対応は少なくありません

たとえば、酸素投与や体位の調整、呼吸法の指導などがあります。

看護師ライター

げんさん

ここからは、筆者の経験から、新人看護師も実践しやすい初期対応を具体的に解説します。

酸素投与

SpO₂の低下や努力呼吸、チアノーゼなどがみられる場合は、医師の指示を確認したうえで酸素投与します。投与時は、経鼻酸素カニューレや酸素マスクなど、流量に合ったデバイスを選びましょう

酸素投与後は、呼吸状態がどのように変化したかを観察することが大切です。

看護師ライター

げんさん

数値が改善していても、呼吸が楽になっていない場合は再評価が必要となります。

楽な呼吸姿勢の調整(体位)

ファーラー位や起座位は、呼吸が楽になりやすい姿勢とされています。[10][11]

患者の訴えや状況を踏まえて体位を選ぶことが大切です。

以下の表に、体位ごとの特徴や呼吸が楽になる理由、期待できる効果についてまとめました。

体位呼吸が楽になる理由期待できる効果
ファーラー位:ベッドを45度ギャッチアップした姿勢[10]上半身を起こすことで横隔膜にかかる腹圧が下がる。[10]その結果、肺が広がりやすくなる。[10]息を吸いやすくなる[10]胸の圧迫感が軽減される[10]安静を保ちながら呼吸を整えやすい[10]
ファーラー位の特徴
体位呼吸が楽になる理由期待できる効果
起座位:前屈みになり机にもたれかかる姿勢机やオーバーテーブルが体を支えるため、呼吸を助ける筋肉の過剰な働きを抑える。[11]また、横隔膜が効率的に働きやすくなる。[11]息苦しさがやわらぐ[11]呼吸に伴う身体的負担が軽減する[11]
起座位の特徴

呼吸法の指導

呼吸困難の場面では、呼吸法の指導が役立つ場合があります。腹式呼吸はお腹の動きを意識しておこなう方法で、口すぼめ呼吸は鼻から吸ったあとに口をすぼめてゆっくり吐く方法です。[4]

まず、お腹を膨らませるイメージで、鼻からゆっくり息を吸ってもらいましょう。次に、口をすぼめた状態で、吸気よりも時間をかけて息を吐いてもらいます。

看護師ライター

げんさん

このとき、看護師が優しく声をかけながら、患者の呼吸のリズムに合わせて一緒に実施しましょう。

新人看護師が判断に迷う場面と対応

呼吸困難時の観察項目やアセスメントについて知識があっても、実際には判断に迷う場面もありますよね。ここでは筆者が考える、迷ったときに持つべき視点と対応法をお伝えします。

迷ったときは、「普段と比べてどうか」「少しでも悪化の兆候がないか」という視点で考えてみてください。たとえば呼吸数が正常でも、努力呼吸や苦悶表情がみられる場合は、異常の可能性を否定できません。

看護師ライター

げんさん

数値だけで正常と判断せず、呼吸の様子や患者の訴えを含めて総合的に評価し、見逃しを防ぎましょう。

それでも判断に自信が持てないときは、「一人で抱え込まない」ことが重要です。観察した内容を整理し先輩へ報告すれば、判断をサポートしてくれるでしょう。迷った時点で相談することは、未熟さではなく患者の安全を守る行動です。

呼吸困難に落ち着いて対応しよう

呼吸困難時に必要なのは、特別な判断力ではなく、順序立てて考える力です。

まず、意識レベルや会話の可否を観察し、緊急性がある場合は速やかに応援を呼びましょう。

看護師ライター

げんさん

緊急性がない場合は、自身で呼吸状態を評価しながら、初期対応します。この流れを意識すると、焦りや不安があっても行動しやすくなります。

判断に迷ったときは、観察した事実を整理して先輩へ相談してください。安全な対応のためには、一人で抱え込まないことも大切です。呼吸困難時の対応を正しく理解し、落ち着いて対応しましょう。

【参考】

[1]厚生労働省>ホーム>政策について>審議会・研究会等>医政局が実施する検討会等>チーム医療推進のための看護業務検討ワーキンググループ>第7回チーム医療推進のための看護業務検討ワーキンググループ資料> 資料(全体版)p32

[2]厚生労働省>ホーム>政策について>分野別の政策一覧>福祉・介護>生活保護・福祉一般>原則として医行為ではない行為について>原則として医行為ではない行為に関するガイドライン p32

[3]厚生労働省 > 政策について > 分野別の政策一覧 > 雇用・労働 > 労働基準 > 安全・衛生 > 離職するじん肺有所見者のためのガイドブック>全体版 p8

[4]特定非営利活動法人日本緩和医療学会>学術発刊物>ガイドライン>進行性疾患患者の呼吸困難の緩和に関する診療ガイドライン(2023年版)p29

[5]厚生労働省>ホーム>政策について>分野別の政策一覧>健康・医療>医療>特定行為に係る看護師の研修制度 特定行為に係る手順書例集>特定行為に係る手順書例集 p49

[6]厚生労働省>審議会、研究会等> その他(検討会、研究会等)> 医政局第5回 看護教育の内容と方法に関する検討会議事次第>資料3山内委員資料(全体版)p9

[7]Yoonjoo Kim,YunKyong Hyon,Sung Soo Jung et al.Respiratory sound classification for crackles, wheezes, and rhonchi in the clinical field using deep learning.Sci Rep.2021. 25;11:17186 p2 Table 1

[8]厚生労働省>政策について>分野別の政策一覧> 福祉・介護> 障害者福祉> 障害者福祉分野のトピックス> 障害児支援施策> 5.重症心身障害児者等支援者育成研修テキスト>(5)医療2 p58

[9]厚生労働省>ホーム>政策について>分野別の政策一覧>福祉・介護>障害者福祉>平成24年度 喀痰吸引等指導者講習事業(第三号研修指導者分)資料>喀痰吸引等指導者マニュアル(第三号研修) 全体版[PDF]p33

[10]Arvind Kumar Pal,Sunita Tiwari,Dileep Kumar Verma.Effect of Recumbent Body Positions on Dynamic Lung Function Parameters in Healthy Young Subjects.J Clin Diagn Res.2017;11(5)p8-10

[11]Topcuoglu C, Yumin ET, Saglam M, et al.Neural respiratory drive during different dyspnea relief positions and breathing exercises in individuals with COPD.Respiratory Care. 2024;69(9) p1129.p1135-1136

この記事の執筆者

看護師ライター:げんさん

看護師歴6年。大学病院にて血液・消化器・呼吸器内科を経験し、現在は同院の救急救命ICUに勤務。臨床現場で培った知識と経験をもとに、医療・看護分野の記事を専門的かつ分かりやすく執筆しています。読者の方が安心して読み進められるよう、正確性と丁寧な説明を心がけています。「第22回Medi+医療ライターのはじめかた講座」卒業生。

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