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抗がん剤の副作用はいつまで?症状別の対処法を薬剤師が解説

抗がん剤治療をはじめると「副作用はいつまで続くのか」「本当に元の生活に戻れるのか」という不安を感じる方は少なくありません

治療前は何気なくできていた家事や仕事、外出が思うようにできなくなり、前のように生活できない自分に戸惑いや落ち込みを感じる方も多いのではないでしょうか。

実は副作用には続く期間の目安があり、生活のつらさを軽減する対処法もあります。先が見えない不安も、正しい知識をもつことで軽くできるでしょう。

この記事では外来がん専門薬剤師である筆者が、症状別に副作用の目安期間をお伝えします。また、対処法や仕事と両立するポイントもあわせて解説いたします。

薬剤師ライター

いとう あきらさん

今後の治療に不安がある方は、ぜひ最後までご覧ください。

目次

抗がん剤の副作用はなぜ起きるのか

抗がん剤は分裂が活発ながん細胞を標的にしますが、同時に髪や粘膜など、同じく分裂が盛んな正常細胞にも影響を与えます[1]その結果、発生するのが脱毛や吐き気などの副作用です。[1]

海外の論文で、乳がんや肺がん、大腸がんで化学療法を受けている患者を対象とした副作用の発生率などを調べた研究があります。同研究によると、対象となった449名のうち86%が治療中に何らかの副作用を経験していました。また、67%が6つ以上の副作用を経験したと報告されています。[2]

このことから、抗がん剤治療を受ける方の多くが副作用を経験しているとわかります

薬剤師ライター

いとう あきらさん

副作用の期間と対処法をあらかじめ理解しておくことが、日常生活と治療を両立させるための鍵となるでしょう。

副作用はいつまで続く?症状別の対処法

 

抗がん剤の副作用がいつまで続くのかは、多くの患者さんが不安に感じる点ですよね。

副作用の発現時期や症状は、薬剤の種類や組み合わせによって、ある程度予測が可能です。[3]

これから紹介するのは、薬剤師の筆者が医療現場でよく相談される副作用です。

薬剤師ライター

いとう あきらさん

それぞれの症状について発症時期や日常生活での対処法を詳しく解説します。

※症状の経過や対応については個人差があります。受診の目安もまとめましたので、強い症状や改善しない場合は、自己判断せず医療機関に相談してください

悪心・嘔吐

抗がん剤による悪心や嘔吐は投与後24時間以内に起こるものもあれば、数日経ってから起こるものもあります。[4]感じ方や回復の早さには個人差もあるでしょう。

日常生活でのポイント病院へ連絡したほうがいい目安
食事は少量ずつ回数を増やす[5]食べやすい形状にする[5]1日に何回も吐く[4]水分摂取ができない[4]
悪心や嘔吐による日常生活へのポイントと病院への連絡の目安

下痢

下痢は投与初日から24時間以内に起きる早発性と、翌日以降に起きる遅発性があります。[6]

日常生活でのポイント病院へ連絡したほうがいい目安
便の見た目、回数、血便、服用タイミングをメモする[6]水分を多めにとる[6]下痢が続き、水分が十分にとれない[6]血便や強い腹痛、頻回の下痢が続く[6]
下痢による日常生活でのポイントと病院への連絡の目安

便秘

便秘は明確な発症時期を判別しづらく、薬によっては投与当日から発症する場合もあれば数日後に発症する場合もあります。[7]

日常生活でのポイント病院へ連絡したほうがいい目安
適度な運動をおこなう[7]食物繊維を多く含む食事をとる[7]腹痛や吐き気・嘔吐が続く[7]お腹の張りや著しい便秘が続く[7]
便秘による日常生活でのポイントと病院への連絡の目安

白血球減少

白血球減少は、抗がん剤投与から10~14日目ごろに起こりやすい副作用です。[8]多くの場合、治療終了後数週間ほどで回復してくるものの、治療内容によっては次の治療まで影響が残る場合もあります[9]

日常生活でのポイント病院へ連絡したほうがいい目安
細菌に対する抵抗力が弱くなるため、手指消毒、マスク着用など菌を体内に入れないようにする[9][10]発熱、咽頭痛、寒気の症状がある[9]
白血球減少による日常生活でのポイントと病院への連絡の目安

しびれ(末梢神経障害)

末梢神経障害は、早期に起きる場合と数回治療してから起きる場合があります。[11]治療をはじめて数週間から数か月以上経って発症するとされています。[11]抗がん剤の治療終了後、数か月以内に改善するケースもありますが、一部の方は症状が長く残ることもあるでしょう[11]

日常生活のポイント病院に連絡したほうがいい目安
手や足(とくに足先)の痛み、しびれではじまることが多い点を覚えておく[11]手や足がピリピリする[11]手や足が痛い[11]呼吸が苦しい[11]
しびれによる日常生活でのポイントと病院への連絡の目安

手足症候群

手足症候群は、抗がん剤治療を開始してから1か月以内に現れることが多い副作用です。抗がん剤の種類によっては10か月以内にはじめて症状が現れる場合もあります。[1]

最初は、手のひらや足の裏の赤み、違和感からはじまり、治療を続けるうちに徐々に症状が強くなるのが特徴です。[1]回復までの期間は個人差がありますが、治療を終了・休薬した場合、多くは数週間から数か月で回復に向かうとされています。[1]

日常生活のポイント病院に連絡したほうがいい目安
摩擦、熱を避ける[1]衣類はゆったりとしたものにする[1]保湿クリームを使って乾燥を防ぐ[1]水ぶくれやひびわれがある[1]強い痛みがある[1]
手足症候群による日常生活でのポイントと病院への連絡の目安

アレルギー症状

アレルギー症状は多くの場合、投与後数分から30分以内に起こる副作用です。[12]初回から起きる場合もあれば、投与数回目で起きる可能性もあります。[12]

日常生活でのポイント病院へ連絡したほうがいい目安
アレルギー歴は診察時に必ず伝える[12]蕁麻疹や皮膚のかゆみ、赤み[12]唇や舌のはれ[12]息苦しさ[12]
アレルギーによる日常生活でのポイントと病院への連絡の目安

【実践例】抗がん剤治療と仕事を両立するための工夫

抗がん剤治療を受けながら働くことは、容易ではありません。しかし副作用の経過や対処法を知れば、勤務時間の調整や周囲への共有などの工夫が可能となります。

厚生労働省の令和4年国民生活基礎調査をもとにした推計によれば、仕事をもちながらがんで通院している人の数は49.9万人とされています。[3]

薬剤師ライター

いとう あきらさん

一人で頑張りすぎず、周囲へ早めに相談するという考え方が大切です。

日々の自分の体調を記録しよう

仕事を続けながら治療を受ける場合、ノートなどに記録をつけておくと体調管理に役立ちます。たとえば、体温や食事量、吐き気の有無などを毎日10点満点で評価すると、体調の波を把握しやすくなるでしょう。

記録があれば、治療中に勤務先に配慮してほしいポイントが整理しやすくなります。[13]

薬剤師ライター

いとう あきらさん

診察時に医師が気付かなかった症状なども正確に伝えやすくなり、治療や働き方の調整にも役立つでしょう。[13]

すぐに主治医に連絡すべき場合を知ろう

抗がん剤治療中、「この程度で連絡していいのか」と迷うのは珍しくありません。その際に目安となるのが、日常生活に支障が出ているかどうかです。

薬剤師ライター

いとう あきらさん

症状の強さ「だけ」ではなく「今の生活がきちんとできているか」をみるほうが、体調の変化や医療相談のタイミングを知るのに役立つ可能性があります。

治療の経過が悪い場合や、副作用がつらく仕事を続けるのが難しいときは、我慢せず早めに主治医や職場へ相談しましょう。

副作用の対処法を知って、生活の質を上げよう

抗がん剤の副作用は避けられない面もありますが、正しい知識があれば、必要以上の不安を抱えずに済みます。副作用には起こりやすい時期や回復の目安があり、早期の対応で生活への影響を軽減しやすくなるでしょう。

つらさを我慢し続けるのが、必ずしも治療効果を高めるとは限りません。

薬剤師ライター

いとう あきらさん

「生活や仕事に支障が出てきた」「いつもと違う状態が続いている」と感じた時点が、医療者に相談する一つの目安になります。

副作用と上手に付き合いながら、あなたらしい毎日を維持するための工夫をぜひ取り入れてみてください。

【参考】

[1]厚生労働省>政策について>分野別の政策一覧>健康・医療>医薬品・医療機器>医薬品等安全性関連情報>重篤副作用疾患別対応マニュアル>癌(令和4年2月追加)>手足症候群:全文(令和元年9月改定)p6.p8.p12.p14.p15.p35-42

[2]Alison Pearce,Marion Haas,Rosalie Viney et al.Incidence and severity of self-reported chemotherapy side effects in routine care: A prospective cohort study.PLoS One.2017 10;12(10):e0184360 p1.p5

[3]厚生労働省>政策について>分野別の政策一覧>雇用・労働>労働基準>治療と仕事の両立について>事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン(全体版)令和6年3月改訂版 p28.p30

[4]N Bouganim,G Dranitsaris,S Hopkins et al.Prospective validation of risk prediction indexes for acute and delayed chemotherapy-induced nausea and vomiting.Curr Oncol.2012 Dec;19(6):e415.e417

[5]Kexuan Li,Yuanyuan Cai,Shu Xie et al.Evidence Summary for Nonpharmacological Management of Chemotherapy-Induced Nausea and Vomiting.Biomed Res Int. 2022 :23;2022:4741193 p7

[6]厚生労働省>政策について>分野別の政策一覧>健康・医療>医薬品・医療機器>医薬品等安全性関連情報 >重篤副作用疾患別対応マニュアル>消化器(令和3年4月改定)>重篤な下痢>重度の下痢:全文(令和3年4月改定) p7.p8.p13

[7]厚生労働省>政策について>分野別の政策一覧>健康・医療>医薬品・医療機器>医薬品等安全性関連情報 >重篤副作用疾患別対応マニュアル>消化器(令和3年4月改定)>麻痺性イレウス:全文(令和3年4月改定) p6.p8.p20

[8]Yoshihiko Furuya.Early neutropenia on day 8 treated with adjuvant Docetaxel-based chemotherapy in early breast cancer patients: Putative mechanisms within the neutrophil pool system.PLoS One.2019:18;14(4):e0215576 p1

[9]厚生労働省>政策について>分野別の政策一覧>健康・医療>医薬品・医療機器>医薬品等安全性関連情報 >重篤副作用疾患別対応マニュアル>血液(令和4年2月改定)>無顆粒球症(顆粒球減少症、好中球減少症)全文(PDF)(令和4年2月改定)p6.p7.p14

[10]厚生労働省> 政策について > 分野別の政策一覧 > 福祉・介護 > 介護・高齢者福祉 > 「高齢者介護施設における感染対策マニュアル改訂版(2019年3月)」の公表について>パンフレット全文p1

[11]厚生労働省>政策について>分野別の政策一覧>健康・医療>医薬品・医療機器>医薬品等安全性関連情報 >重篤副作用疾患別対応マニュアル>神経・筋骨格系(令和5年4月改定)>末梢神経障害:全文(PDF) p5-7.p8-9.p11.p13

[12]厚生労働省>政策について>分野別の政策一覧>健康・医療>医薬品・医療機器>医薬品等安全性関連情報 >重篤副作用疾患別対応マニュアル>過敏症(令和元年9月改訂)>アナフィラキシー:全文(PDF)(令和元年9月改定)p6.p28

[13]「治療と仕事の両立支援ナビ」(厚生労働省)ウェブサイト>ダウンロード>仕事とがん治療の両立お役立ちノートp6.p14-16

この記事の執筆者

薬剤師ライター:いとう あきらさん

新卒で大手調剤薬局に入社。がん・在宅・透析・生活習慣病などを経験。就業中に外来がん専門薬剤師資格を取得。現在は派遣薬剤師として全国で活動しつつ、執筆活動やHP制作の活動中。日々の学習を欠かさず常に知識をアップデートし、専門性と感性を磨き続けるのが信条。現場の知見を活かし「疲れない・飽きさせない」良質なコンテンツを届けます。「第22回Medi+医療ライターのはじめかた講座」卒業生。

X:https://x.com/kySCbq6U1n12758

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