現在、日本社会において不眠に悩まされている方は少なくありません。不眠を改善するためにはまず生活習慣を整えるのが第一ですが、なかなか難しいと感じている方も多いのではないでしょうか。
「睡眠薬を使った方がいいのでは」と考える方もいるでしょう。しかし、睡眠薬は医師の処方が必要で、受診の手間や依存性・副作用への不安など、心理的なハードルを感じやすいのも事実です。その点、市販の睡眠改善薬は医師の処方を必要とせず、薬局やドラッグストアで購入できます。
本記事では薬剤師である筆者が、市販の睡眠改善薬について、医療用の睡眠薬とどのように異なるのか詳しく説明します。
薬剤師ライター奈良山 弘基さん
また、睡眠改善薬の選び方や、使用する際の注意点についても詳しく説明しますので、ぜひ最後までご覧ください。
不眠とは


夜十分に眠れないために、日中体がだるい、食欲がない、集中力ややる気がでないといったことはありませんか。
厚生労働省の「令和6年国民健康・栄養調査結果」では、睡眠で休養が十分にとれていない人の割合は男性19.7%、女性21.2%となっています。[1]このように不眠で悩む方は多く、不眠が続くと仕事や家事の質が低下し、日常生活にも影響をおよぼす可能性があります。
不眠とは、眠る環境が適切であるにもかかわらず、寝つきが悪い(入眠障害)、夜中に何度も起きてしまう(中途覚醒)、朝早くに目が覚めてしまう(早朝覚醒)などの症状がでる状態です。[2]
最近眠りにくいと感じたときは、まずは生活リズムや睡眠環境を見直すことが大切です。[3]それでも不眠の症状が続くようなら、医療機関を受診し、適切な治療を受ける必要があるでしょう。一方、寝つきが悪い、眠りが浅いなどの一時的な不調であれば、市販の睡眠改善薬で対処できる場合があります。



奈良山 弘基さん
まずは生活習慣を整えたうえで自身の不眠状態の程度を把握し、それに応じて受診するか、市販薬を試すかを判断してみてはいかがでしょうか。
睡眠薬と睡眠改善薬の違い


睡眠薬と睡眠改善薬の大きな違いは、医師の処方が必要であるか、そうでないかです。
睡眠薬は、医師に不眠症と診断されたうえで処方せんが発行されなければ使用できません。



奈良山 弘基さん
一方、睡眠改善薬は処方せんが不要で、ドラッグストアなどで購入できます。
この章では、睡眠薬と睡眠改善薬の作用や副作用の違いについて詳しく説明します。
医療用の睡眠薬とは
睡眠にかかわる神経伝達物質やホルモンに影響することで、不眠を改善する効果があり、いくつかの種類があります。[3][4]不眠症の治療でおもに使われるのは、ベンゾジアゼピン受容体作動薬、オレキシン受容体拮抗薬、メラトニン受容体作動薬の3つです。[3]
ベンゾジアゼピン受容体作動薬は、脳の興奮を鎮めるγアミノ酪酸(GABA)という神経伝達物質の働きを強めることで、催眠作用を示します。[4]
薬の効果を実感しやすい一方、一部のベンゾジアゼピン受容体作動薬は、高用量や長期使用により身体依存や精神依存を起こす恐れがあるとされています。[4]



奈良山 弘基さん
そのため、使用するには医師の診断が必要であり、依存性について十分に理解することが大切です。
市販の睡眠改善薬とは
市販の睡眠改善薬の主成分は、ジフェンヒドラミンという成分です。[3]ジフェンヒドラミンは、脳内のヒスタミンの働きを抑えることにより、一時的な不眠症状を和らげます。[3]
医師の処方なしで購入できますが、効果は「一時的な不眠の緩和」です。[3]



奈良山 弘基さん
使用していても症状に改善が見られない場合は、医療機関を受診しましょう。
不眠症状を和らげる市販薬の選び方


ドラッグストアや薬局には多くの市販薬があり、どれを選べば良いか迷いますよね。不眠を和らげる市販薬は、大きく2つに分けられます。
一つは、寝つきが悪いなどの一時的な不眠症状を和らげる薬、もう一つは、体質に着目して不眠の改善をサポートする薬です。
それぞれ特徴が異なるため、目的や症状にあわせて選ぶことが大切です。この章では、不眠症状を和らげる市販薬の選び方とポイントについてお伝えします。
一時的な不眠症状を和らげたい方
寝つきが悪い、眠りが浅いなどの一時的な不眠症状を和らげたい方は、ジフェンヒドラミンを主成分とする睡眠改善薬を検討してみましょう。ヒスタミンの働きを抑えることで、神経の興奮を抑制し、一時的な不眠症状を緩和してくれます。[3]
仕事でのトラブルや人間関係の変化、引越し、結婚などで一過性のストレスを感じると、数日間眠りにくくなることがあるでしょう。



奈良山 弘基さん
睡眠改善薬はこのように一時的に眠れないときに選択される場合があります。
現在市販されている睡眠改善薬には、フィルムコーティング錠で飲みやすくしたものや、中身が液状のソフトカプセルタイプもあります。主成分が同じでも、剤形は商品によって変わるため、自分に合った商品を選びましょう。
体質から不眠を改善したい方
体質から不眠症状を和らげたい場合、漢方という選択肢もあります。
以下に不眠のタイプと、適しているとされている漢方薬をご紹介します。
| 適しているとされる漢方薬 | 不眠のタイプ |
| 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう) | 不安があって眠れない[5] |
| 抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ) | イライラして眠れない[5] |
| 酸棗仁湯(さんそうにんとう) | 心身が疲れて眠れない[5] |
| 黄連解毒湯(おうれんげどくとう) | のぼせ気味でイライラして眠れない[5] |
上記の漢方薬は市販で売られているものもあります。



奈良山 弘基さん
選ぶ際はパッケージの説明文などを確認し、迷ったときは薬剤師や登録販売者に相談しましょう。
睡眠改善薬の注意点


睡眠改善薬を使用する場合は、以下の点に注意しましょう。
- 服用タイミングを守る
- 薬を飲んでから運転しない
- お酒と一緒に飲まない
- 妊娠している人、妊娠の可能性がある人は服用しない
- 日常的に不眠のある方、不眠症と診断を受けた人は使用しない[3]
- 風邪薬やアレルギーの薬とは併用しない[6]
- 前立腺肥大症や緑内障と診断された方は、服用を避ける[6]
睡眠改善薬は、健康な人の一時的な不眠症状を和らげるものであるため、日常的に眠れない方は医療機関を受診しましょう。[3]
また、風邪薬やアレルギーの薬には、睡眠改善薬の主成分であるジフェンヒドラミンと同じ働きをする成分が入っている場合があります。[6]



奈良山 弘基さん
あわせて飲むと眠気などの副作用が増強する恐れがあるため、併用はしないように注意しましょう。
加えて、ジフェンヒドラミンは前立腺肥大や緑内障の症状を悪化させる可能性があります。これらの病気と診断された方は、服用を避けるのが望ましいでしょう。[6]
市販薬を正しく使って、不眠の改善を目指そう


不眠はストレスなどの影響で起こりやすく、多くの人が抱えている悩みです。不眠の改善には、まず生活習慣や睡眠環境を見直すことが必要です。



奈良山 弘基さん
それでも症状の改善が見られない場合には、上記で説明した睡眠改善薬や漢方薬が役立つこともあります。
睡眠改善薬は、商品ごとの注意事項を意識しながら正しく使用することで、睡眠の質を改善する一つの手段となります。良い眠りをとおして、毎日の生活をより快適なものにしましょう。


薬剤師ライター:奈良山 弘基さん
私立大学薬学部卒業後、公立病院に就職。その後転職し、現在、回復期病院で働いています。病院で勤務し6年となります。他職種と協力して、患者さんの悩みを解決してきました。「きちんと理解してもらうように、わかりやすく丁寧に伝える」をモットーに、これまでの経験をもとに医療情報を読者に伝えたいです。「第22回Medi+医療ライターのはじめかた講座」卒業生。
奈良山さんも受講した、「医療ライターのはじめかた講座」とは?









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